RAW現像を始める前に
プロからアマチュアまでカメラでJPEG撮影をする方だけではなく、RAWで撮影して後処理で必要な画像ファイルを作成する方も多くいます。
RAW現像と言えばノイズ処理や解像などの画質の話からRAW現像ソフトの使いこなし、さらにLightroomClassicを中心にした「プリセット」まで、業界では常にいろんな話題で盛り上がっています。
写真(スチール)の業界では年々カラーマネジメントの話題が少なくなり、「カラーマネジメントモニターはこれが安くて良い」とかノートPCなのに「(ソフト)キャリブレーションすればバッチリ」とか、「Macのモニターなら何もしなくても良い」などと偏った意見が増えている気がします。
さらに映像関係も含めてカラーマネジメントの基本的な仕組みを無視して、ソフトウエアのカラー設定や未だに「PC側のモニター管理と連携を取らない外部モニター独立の色設定」をカラーマネジメントと称するメーカーやそれを疑問に思わないプロの方が大変多くいます。
このページでは、プロがRAW現像(調整)を行う上で最初に必要なこと、理解しておかなければならない条件や色を扱う上での最初の設定などを再認識してもらえればと思います。ちょっと厳しめの書き方になるところもありますが、プロの方は自分はしっかり出来ているのか確認して見て下さい。
また、RAW現像の実作業としてSNSや動画でも数多くのTIPSは取り挙げられますが、話題の中でほぼ触れられていないRAW現像ソフトの最初の部分になりますので、RAW現像する方、興味のある方はぜひご覧ください。
RAW現像ソフトで「意識すること、確認すること」はいくつかありますが、とくに業界で話題にならない大事な部分を中心に書きます。
🔴RAW現像ソフトを表示するモニター、タブレットなどのデバイス(ディスプレイ)の表示
これは当然ながら『カラーマネジメント』の話にもなります。*詳しくは「カラーマネジメントとは」のページをご覧ください。
仕事での画像を扱う場合はとくにそうですが、正確な色の運用を行うためには正確なモニター表示は必須になります。
キャリブレーションは必ず行う必要がありますし、「モニター表示とソフトの色管理」はどちらもPC側のモニター管理との連携が必須です。
なので、プロの方は以下の内容を理解出来ているか今一度確認して見て下さい。
RAW現像は『目的(使用先)』に合わせたカラースペースで「色の破綻のない』階調豊かな色作りを行うことが基本です。
デジタルでも「大は小を兼ねる」と言う考え方が裏側の処理としては必要なこともありますが、生成される色は必ずしも融通は利きません。まずは正確な表示が出来ているかを再確認しましょう。
カメラマン業界ではとくに一般向けに仕事をされている方の「カラーマネジメント」の認識や知識が非常に少ない、もしくは偏っています。
現実としては歯止めは効きませんが、SNSでも見かけることが多いのが以下になります。
厳しい言葉になりますが、これらはデジタルの色を正確に扱い『運用する』と言う意味では間違いです。
広告業界では、ポジフィルム時代からプロはしっかりとカラーマネジメントを理解・意識して作業し、フィルムを運用していました。デジタルになりより一層理解しておかなければならないことが増えましたが、「プロ」である基本は『責任』をしっかり持つかどうかです。
上のような言葉は、申し訳ありませんが、理解のない言い訳だったり、知識のない無責任な発言です。業界は最終的な「写真表現」だけを気にして、カメラワークと結果のみ良ければいいと言う会話が多く、そこに「アート、感性、センス」などの感覚や感情論を最優先に挙げられ言葉巧みに写真を語ります。
「結果オーライ」を前面にするのではなく、デジタル処理を正確に行うために出来ること、限界があることを正確に理解しておきましょう。
◎再認識すべき大切なポイント
・モニター表示(プロファイル)とPCシステム設定の連携
・スマホやタブレットはDisplayP3カバーの各種固有の表示プロファイル固定。キャリブレーション非対応で、癖のある表示。
・スマホやタブレットの画像処理アプリのカラー設定はDisplayP3もしくはProPhotoRGBでの作業色空間で固定
*Lightroomモバイルのようにスマホやタブレットが「DisplayP3表示固定」に対し画像処理アプリの色空間が「ProPhotoRGB固定」ではカラーマネジメントが行われていても正確な色は表示出来ていない
🔴RAW現像ソフト(プレビュー)の各種カメラRAWファイルの解像と描画について
デジタル画像の描画(解像)について、業界ではセンサーサイズや光電変換、電化転送、信号読み出し..etc、、やたら深い部分の話はすぐに盛り上がりますが、アマチュアはもちろん、かけ出しのプロも含めて、ユーザーでは手を出せない「そこより先の認識」を持ってもらう方が良いと感じています。
カメラ内部の素材は勿論ですがセンサーからの技術的な仕組みは各種カメラで違いますし、さらに各種現像ソフトでもいわゆるディモザイク処理の違いで、生成される描画には当然違いがあります。
*「ディテール」の話であれば、当然ながらデータの前に、レンズの性能の違いも当然ありますが、ここではその先の話として考えます。
この「描画(解像)」に関わる部分は、「ディモザイク処理」の認識が強い気がしますが、カメラプロファイルによって解像は変わります。なので、実際には「ディモザイク処理+カメラプロファイル(メーカー色作り)」で、解像を含む描画になっていると考えると良いでしょう。
*カメラプロファイルに関しては「ColorCheckerと色について」のページでDNGプロファイルと共に解説します。
メーカー毎の現像ソフトのディモザイク処理の違いにより「スタート時の解像感」は当然違いがあります。それはファイル容量の話にもなり、例えばJPEGに書き出す際の圧縮率での違いにも反映されます。最高品質で書き出すと例えばCameraRaw(LrC)とDPPでは1.5~2倍くらいのファイル容量の差になります。
DPPやCaptureOneに比べるとCameraRaw(LrC)の最初の処理は必ずしも高精細ではありません。これは単に良し悪しではなく、メーカー毎の処理の取り回しも含めた設計の問題です。もちろんスタートから解像している方が良いです。
最終的な描画(必要サイズ)が求める品質であれば良しとするのが現状ですし、この解像部分でソフトメーカーを選ぶこともあります。
大切なのは良し悪しよりもその認識とカバー出来る処理を正確に行う知識があるかどうかです。
◎CameraRaw(LightroomClassic)のRAWディテール機能について
ノイズ処理としてPureRawでも話題になりますが、CmaeraRawのノイズ処理に付加される『RAWディテール』処理。
これは、ノイズ処理を精度を上げるためでもありますが、ディモザイクの演算処理をさらに精度を上げてディテール再現を強化する機能です。これにより「ある広範囲の一定の色に埋もれたり馴染んで表現が弱くなる部分」の微細な表現が復活します。
「解像(ディテール)」はピクセル単位での描画を意識することが重要です。
上の作例では、とくに真ん中の画像では葉の解像や葉の隙間から覗く土部分の強調、下の画像のように赤い木の部分に重なっている葉の緑が赤系の色に侵食されるように薄く赤緑になっていますが、RAWディテール(再ディモザイク処理)で、細かな色分離を再現します。
*Lightroomユーザーでもボカシ処理のノイズ処理ばかりが話題になりますが、ノイズ処理を「+1(0にはならない)」にすることで解像が上がっていることを実感出来ます。その上で必要な量のノイズ処理をかけます。
🔴作業色空間の設定
RAW現像ではこれが一番重要で、調整を行う前にまずはこの設定を確認します。
現在は写真(画像データ)は必ずしも印刷やプリント出力を行いません。現実にはWEBは勿論、SNSを中心にデバイスでの閲覧の方が多いでしょう。
RGBデータとしての色の運用が中心になりますが、様々な各種モニターやデバイス(ディスプレイ)に対し正確に色を表示出来る訳ではありません。「指定したカラースペースのRGB画像を運用する」と言う考え方がカラーマネジメントの肝にもなります。
デバイス表示を気にすることもありますが、画像には必ず色を確定する為のカラースペースが必要です。そのカラースペース(色空間)内で正確な色表現になるように画像データ作成を行わなければなりません。
RAWデータを現像ソフトで開いたときに『プレビューに表示される色(成分)』が、『ゴール(目的の使用先)』の為の色空間で描画されなければ、色温度を変更することもそれぞれのシーンや物体の色調整なども正確に行うことが出来ませし、意味がありません。
この部分を認識しないユーザーが非常に多いです。とくにLightroom系のユーザーですね。さらにこれはメーカー各社もですが、デバイスでのRAW現像アプリがそうですね。
現実的な作業として「RAW現像ソフトの作業色空間」は例えば、印刷目的であれば、カラースペースはAdobeRGB(sRGBも実際は可)。WEB用としては、PCなどではまだ対応していないディスプレイも多いことから運用としては、sRGBをスタンダードに。(もちろんDisplayP3も可)一般ユーザーでSNSなど明らかにiPhoneなど広色域なデバイスを優先するのであれば、DisplayP3になります。
デジタル黎明期の早い段階でリリースされたCameraRawにはどこよりも早く「作業色空間」としてワークフローダイアログで設定出来るようになっています。
「作業色空間」「ソフト校正」「プルーフ」などは、どれも同じような意味として扱われますが、JPEGやTIFFなどの「色が確定したドキュメント」に対し、RAW現像ソフトで扱うRAWファイルの場合は、まだ色が確定していないので文字通り「作業色空間」と考える方が他の言葉との区別もつきやすいと感じます。
RAW現像ソフトは有料無料でいくつかのメーカーから出ていますが、作業色空間の設定がそもそもないソフトもあります。以下のメーカーもここ最近になって機能として追加されたメーカーもあります。
ご自身が使っているRAW現像ソフトに作業色空間の設定があるのか確認して見ましょう。ない場合は正確な色で現像が出来ないことを再認識しましょう。
CameraRaw:作業色空間
・作業色空間で指定した色で「プレビュー」「ヒストグラム」「RGB値」が表示されます。
CaptureOne:プルーフ プレビュー
・デフォルトは「選択されたレシピ(書き出しで設定されている色空間)」になっています。書き出しと違う作業用カラースペースを選ぶ場合はこちらから任意のプロファイルを指定します。
・プルーフ プレビューで指定した色で「プレビュー」「ヒストグラム」「RGB値」が表示されます。
DPP4:作業用色空間
・作業用色空間で指定した色で「プレビュー」「ヒストグラム」「RGB値」が表示されます。
PhotoLab9:ソフト校正
・ソフト校正で指定した色で「プレビュー」「ヒストグラム」「RGB値」が表示されます。
プレビュー表示はCameraRawがナチュラルで分かりやすいです。ソフトによってはプレビューの色や解像が悪く色空間変更の違いが分かりにくいと感じる場合もあります。
*ここは矛盾していますが、プレビュー表示の各社の違い、何よりもカラースペースによるの各社の色の再現・表現の違いがあり同じにはなりません。
RAW現像では、業界的には「白飛び、黒潰れ」の話題は非常に多く見受けられますが、『色飽和(色飛び)』の話題はとても少ないです。作業色空間の認識が甘いのも同様の理由ですね。
デジタルではとくに赤色の飽和は目立ちますね。りんごやイチゴの表面など飽和している画像をよく見かけます。
CameraRaw(LightroomClassic)には、いわゆる「ハイライト・シャドー警告」だけではなく、RGB各種チャンネルの色飽和警告も備わっています。白い部分はRGB全てのデータが飛んでしまい、よく話題に挙がる「白飛び」部分です。赤はRチャンネル、青はBチャンネル、緑はGチャンネル、黄色はRGチャンネルの数値が255を超えて色飽和を行なっている部分です。
飽和している部分では、ほぼ同じ色味でのわずかな階調やグラデーションが失われ、のっぺりした描画になっている部分になります。
デジタル画像の「色」に関しては『大は小を兼ねません』。一度小さくなった色は後で戻りません。これは『彩度』の調整でも同様です。
画像に広色域の色があり、それをカバー出来る「デバイス性能やソフト設定」で「特定の色の階調」が仮に見えていても、その色を再現出来ないそれよりも小さい色空間、例えば「sRGB」で書き出すと一番外側やその周辺の色は破綻します。
また、ほぼ同じような大きさのAdobeRGBからDisplayP3に変換してもそれぞれが重なり合わない「緑」と「赤」系の色では互いに色飽和や破綻が起きます。
「色が変わる」とか「色が出ない」で、悩んだり困っているCMYKでの話題はよく見聞きしますが、カラースペースによる色の飽和に関する話題は本当に少ないです。
LightroomClassicの場合は、現在はデフォルトの認識はそれなりに増えましたが、まだ色域警告の理解はとても少ないように感じます。
LightroomClassicのデフォルトはプレビュー、ヒストグラム、RGB値はProPhotoRGBです。作業用として『ソフト校正』にチェックを入れると各種プロファイルに切り替えることが可能です。ソフト校正のデフォルトはsRGBの設定になっています。
「現像モジュール」の使い方を説明するWEBや動画は数多ありますが、ほぼ全ての解説でソフト校正と色域警告、色飽和の説明を見たことがありません。
世界的に見ても圧倒的にユーザーの多いソフトですが、スタート時に「目的に合わせた作業色空間:ソフト校正」を使わないことで書き出した色がおかしくなっているケースは非常に多く見受けられます。
*RGB値に関してはバグが出ていることが多く25年末の現時点でもソフト校正を使用してもRGB値はProPhotoRGBのままです。
*「ソフト校正」機能はLightroom4の時に搭載された機能で、それ以前はProPhotoRGBのみだったことと、時代的にモニターの大半がsRGBくらいの表示しか出来なかったことから当時は世界中で「書き出したら画像の色が違う」と声が上がっていました。
◎デジタル写真業界で、ProPhotoRGBを推奨する主な理由
・RAWデータが保有しうる色はAdobeRGBを超している地点もあるので、ProPhotoRGBにしなければ、せっかくの色情報を失う。
・CMYK印刷ではなく、広色域のプロ用プリンターで超光沢出力するとAdobeRGBよりも広い色域を表現できるので、ProPhotoRGBにしなければ、せっかくの色情報を失う。
これらの説明は、一見すると的を得ているように感じますが、この条件は出力先に合わせた色の再調整が可能な場合です。つまりProPhotoRGBの画像をPhotoshopで再度カラー補正を行い目的の出力先に合わせて色補正を行う場合のみ有効になります。
「RAW現像ソフト」だけで完了する一般的な仕事や作品作りなどの場合は、例えばLightroomClassicでは、ProPhotoRGBのプレビューで色を確認して、書き出しでsRGBを指定して、その結果色飽和を起こした画像が仕上がります。
*ProPhotoRGBについては、「ProPhotoRGBと他海外のプロファイル」ページで詳しく書いています。
◎Photoshopの色の校正と色域外警告
◎作業色空間のまとめ
🔴RAW現像ソフトでのシャープネス処理について
この部分は、こちらでは結論だけ書いておきます。
RAW現像ソフトでは、『目的に合わせた画像サイズ』に対して「適切で最適なシャープネス処理』を行うことは出来ません。
SNSでは「カメラ内JPEG撮影とRAW撮影」で常に論議が起こり話題になりますが、同様に「JPEG撮影」も『目的に合わせた画像サイズ』としてシャープネスは正確に行えません。
画像に必要なシャープネス処理としては、どちらも正確に行えないことを理解しましょう。
*この部部は、「コントラストと各種シャープネスの違い」ページで解説予定です。
